団塊状降水系と地形性降水系の複合による豪雨

対流圏科学研究分野 關谷 直高

 

1.はじめに

   南部九州で2003719日から降り始めた雨は、日付が変わった200時頃からその強さを増し、熊本県水俣市と鹿児島県菱刈町を中心に集中豪雨となった。200時から12時までの観測された積算雨量は熊本県水俣市深川で379mm、鹿児島県菱刈町で474mmに達した。

        過去の研究によって、梅雨の時期の南部九州における豪雨は主に団塊状降水系によるものと地形性線状降水系のよるものがあることが判っている。今回の事例では、九州の西の海上で発達し東進した団塊状降水系と、甑島および紫尾山による地形性線状降水系が複合することによって豪雨になったようである。

        本研究ではこの事例について解析し、集中豪雨となった仕組みを解明することによって、梅雨の時期の九州地方における団塊状降水系、地形性線状降水系についての更なる理解を深めることを目的とする。

 

2.使用したデータ

 レーダーデータ

 ウィンドプロファイラーデータ

 熊本県降水データ

 鹿児島県降水データ

 アメダスデータ

 高層気象観測

 メソ客観解析データ

 気象庁天気図

 気象衛星GOES赤外雲画像

 

3.解析結果

 今回解析した事例では、梅雨前線は団塊状降水系および地形性線状降水系の北側に位置し、豪雨の起きた前線の南側では大まかには南西からの地上風が長い時間に亘って吹いていた。比湿は九州の南西の海上で大きく、南西風が大量の水蒸気を輸送していたことが判る。これらは、梅雨期における九州地方の地形性線状降水系が長時間持続するための条件であることが、過去の研究から判っている。更に、ウィンドプロファイラーデータの解析によると、高度2500m付近の風向は長時間に亘って一定で、地形性線状降水系の走向に一致していた。このことは地形性線状降水系に伴う降水域を一定に保った。

 今回、日降水量が400mm500mmを越える集中豪雨となったのは、団塊状降水系に伴う降水と、その南縁で長時間持続した地形性線状降水系に伴う降水が複合したことに原因があると思われる。地形性線状降水系が長時間維持するためにはその走向を決める下層から中層の風向が一定に保たれる必要があるので、本来、団塊状降水系の通過は地形性線状降水系の維持には不利に働く。しかし今回の事例では団塊状降水系のすぐ南縁で地形性線状降水系が起きたために地形性線状降水系が持続し、団塊状降水系と地形性線状降水系が複合した所では局所的な集中豪雨となったと思われる。