気温・気圧場偏差の長期変動について〜『異常』気象と気候変動の関係〜

対流圏科学研究分野 坂井大作

 

1.はじめに

 地球温暖化が少しずつ進行している中、世界では最近、異常気象が頻発していると言われている。例えば昨年、ヨーロッパ一帯では40℃を超えるような異常高温となり多数の死者が出た一方、日本では著しい冷夏となった。

 さて、昨年のこの現象は確かに異常ではあるけれども、地球温暖化と関係しているとは言い切れない。この異常気象が温暖化に関係無く起こっている可能性もあるのである。これに限らず、他の異常気象についても今の段階では同じことが言える。そこで、長期的な気温データを解析し、トレンドを除いた上で気温変動がどうなっているのかを調査した。

2.使用データ

 NCEP/NCAR再解析データ(19481月〜200012月、636ヶ月)の地上気温・地上気圧

3.解析方法と結果

まず、地上気温について各月のトレンドを計算して、トレンドからの偏差を求めた。季節ごとにその値から21年の移動分散を計算した。これは気温偏差が長期的に大きくなっているか、小さくなっているかを示す指標となっている。長期変動という意味では21年の移動平均をとれる最後の年(1990年)と最初の年(1958年、冬は1959年)が重要であるので、この2つの年の差を調べた。ただし、このままでは一般に変動の大きい陸地で大きくなる傾向があるので、差を最初の年の値で割った変化率で比較することにする。一例として冬の変化率を示す(図)。オホーツク海、アラスカ沿岸、グリーンランド南西岸など、大陸沿岸で正の変化率が大きいのが特徴である。

次にその値が特に大きい地点と小さい地点について、その変動の要因について調べた。地上気温は気圧配置に支配されるので、まず気温による気圧の回帰(regression)を計算した。regressionが正の値のところでは気温が平均よりも高くなれば平均より気圧が高くなり、気温が平均より低くなれば平均より気圧が低くなっている。

図:冬の移動分散の変化率(単位%)

 

一般に変化率が大きな場所ではregressionによる気圧の等値線の間隔が狭くなっており、気圧傾度が大きくなっている。これが暖気や寒気を流入させることによって、気温変動を大きくしている要因であると思われる。