気温と気圧の長期トレンドの空間パターンについて

対流圏科学研究分野 青木 孝枝

 地球温暖化をはじめとする大規模な地球大気・海洋の変化が、近年大きな話題となっている。 本研究では、対流圏、成層圏の温度やジオポテンシャル高度(気圧)に近年どのような傾向があるのか、 そしてその原因は何かということについて調べた。

 まず初めに、北半球の温度場(1000hPa)とジオポテンシャル高度場(500hPa,10hPa)の線形トレンドを 求めた。すると、温度場については冬のアフリカの寒冷化、冬及び春のユーラシアの温暖化が顕著 であるということが分かった。また、高度場については、500hPa面では冬のトレンドが特徴的であり、 北太平洋上など3地域で高度の低下が見られた。10hPa面では、秋と冬に北極を中心とした高緯度で 高度の低下が、逆に赤道域では高度の上昇が見られた。

 次に、北半球全体で、温度場と高度場が何に影響されているかを調べるために、赤道域SST、 成層圏極夜ジェット(PNJ)との相関を計算した。すると、いずれとも高い相関が得られた。 しかし温度場、高度場のデータからSST及びPNJの影響を取り除き、修正前後のトレンドを比較した場合、 高度場とPNJは関連がないという結果になった。このように矛盾しているような結果になったのは、 修正後のトレンドは修正する物理量自身のトレンドの有無に左右されるからだと分かった。

 更に、温度場に関して領域毎の解析を進めた。トレンドが顕著であった冬のアフリカ、春のユーラシアのノヴァヤゼムリャ付近、中央シベリア高原の3地域に注目し、寒冷化あるいは温暖化の原因について調べた。各地域の温度変動と様々な物理量との相関を計算した結果、アフリカはその南側のサヘル地域と相関が高いという結果になった。500hPaジオポテンシャル高度場との相関をとった場合には、いずれにおいても波列が見られた。また、熱力学方程式を用いて温度変動に寄与する項の計算と比較を行った結果、ノヴァヤゼムリャ付近では温暖化のセンスと一致したが、その他の地域についてはトレンドと矛盾する結果となった。

500hPaジオポテンシャルのトレンド





左図: 冬の北半球500hPaジオポテンシャル高度場の
10年変化量。単位はm。北太平洋、グリーンランド、
ユーラシア北部上で高度が大きく低下している。