2002年梅雨期に九州南部地方を通過したメソスケール対流系の雷活動について

対流圏科学研究分野 上野 直子

<はじめに>

 激しい降雨現象には,しばしば雷を伴う。雷は,雷雲内の空間電場が強まり,空気の絶縁を破壊した時に発生する火花放電であるが,雲内での発雷を雲放電,雲と地表間での発雷を対地放電(落雷)と呼ぶ。また,雷電流の正負によって,正極雷,負極雷に分けられる。梅雨期は激しい対流活動に伴って雷活動も盛んであるが,それらの間の関係を取り上げた研究例は少ない。そこで本研究では,梅雨期における対流活動と雷活動についての関係を調べるために,2002630日と76日,九州南部地方を通過した雷活動を伴ったメソスケール対流系の解析を行った。

 

<データと解析手法>

解析に使用したデータは以下の通りである。

・地上,高層天気図  ・GMS赤外画像  ・気象庁レーダーエコー 

・メソ客観解析データ  ・高層ゾンデデータ  ・地上気象観測記録 

・ドップラーレーダーデータ  ・LPATSデータ(落雷データ)

これらのデータをもとに,九州南部地方を通過したメソスケール対流系の発達,衰退についての環境場の解析を行い,さらに,川内サイトを中心とした120km四方の領域内における落雷分布,正極雷・負極雷分布,落雷とエコーの関係について解析した。

 

<結果>

630日は,九州地方に停滞する梅雨前線の活発化に伴い,前線南側でメソスケール対流系が発達し,九州南部を通過した事例であった.一方76日は,台風5号が九州西方海上を通過した後、台風から伸びるアウターバンドが九州地方を通過した事例であった。

両事例のレーダーエコー強度と落雷データを解析した結果,次の共通点が見られた。負極雷は狭い領域に集中して落ちていたが,正極雷は単独で散発的に落ちていた。負極雷は強エコー領域で,正極雷は弱エコー領域で落ちる傾向があることが分かった。落雷数については,システム内に存在する個々のセルの発達,衰退に伴って増減し,発達期や衰退期では正極雷の割合が全落雷数の2030%に増加し,一方最盛期では,負極雷の割合が90%以上にも達していた。

   

1 630640分のレーダーエコー強度と    図2 630日 強レーダーエコー面積と
        落雷位置(: 正極雷,□:負極雷)                        落雷数の時系列