2001年1月18日に新潟県上越地方沿岸で観測された
降雪バンドの発達過程

流体圏科学講座 対流圏科学研究分野  田中達也

 

はじめに


2001年1月12日から2月1日まで日本海および日本海側において,冬季に発生する メソ擾乱を観測するために野外観測「冬季日本海メソ対流系観測2001(WMO-01)」 (吉崎ほか)が行われた. この観測期間中の1月12日から18日にかけて強い寒気が日本付近に流入した影響で, 北陸地方を中心に記録的な大雪となった.新潟県上越地方の高田測候所における 積雪量は1月11日には10cmだったが,17日には141cmにも達した. この観測期間中の1月18日12JST前後に上越地方日本海沿いで降雪バンドが 発達,海岸沿いに強い降雪をもたらした. 本研究では,この降雪バンドの発達過程に注目して解析を行った.

 

解析データと数値モデル


解析には,新潟県上越市と同県青海町に設置された防災科学技術研究所の2台の ドップラーレーダーにより得られた観測データを用いた.ドップラーレーダー データの解析ツールとして,気象庁で開発された解析ソフト“Draft”(田中・鈴木,2000)を使用した. 地表気象データには,気象庁のアメダスデータを用いた.さらに,気象庁ル ーチンワークとして輪島で行われている定時高層ゾンデ観測データのほか, WMO-01期間中に三国,上越,および日本海上の3台の気象観測船,長風丸, 清風丸,高風丸で臨時観測された高層ゾンデ観測データを用いた.

観測された降雪バンドの発達過程を詳細に調べるため,観測データとともに, 気象研究所/数値予報課統一非静力学モデル(MRI/NPD-NHM;Saito and Kato,1996)を 用いた. 水平分解能20kmの気象庁領域スペクトルモデル(RSM)予報値(1801JST)を初期値として 水平分解能10kmのMRI/NPD-NHM(10km-NHM;予報領域1500km四方,14hour積分)をRSMに ネスティングし,さらに10km-NHMの1時間予報値(1802JST)を初期値として水平分解能 2kmのMRI-NHM(2km-NHM;予報領域300km四方,13hour積分)を10km-NHMにネスティングした. 降水スキームは氷晶まで含んだ雲物理過程を用いた.

 

結果


ドップラーレーダー解析の結果から,降雪バンドは東北東-西南西に向かう走向 を持っており,ゆっくりと北北西から南南東へ向かって移動していた. バンド内ではセルが東北東側に移動しながら成長・衰退し, 西南西側でセルが発生することでバンドを形成していた(図1). この降雪バンドが発達した時間帯における,能登半島および北陸地方沿 岸部のアメダス地上風とドップラーレーダーによって観測された風は, セルの発生・発達場所での収束域の存在を示唆していた.

MRI/NPD-NHMを用いた数値実験の結果は,下層の対流不安定層の北側からの流入, および北陸沿岸に形成された冷気プールの存在を示した. また,降雪バンドはその冷気プール上で発達していた(図2).


図 1: 2001年1月18日12JSTの青海レーダーで観測された反射強度と 風ベクトル(高度0.5km).
\includegraphics[width=9.0cm,clip]{181200_ground_relative.eps}


図 2: 2km-NHMによる2001年1月18日12JSTの雪の混合比と 風ベクトル(Z$^*$=0.52km).
\includegraphics[width=7.0cm,clip]{no_shaded.eps}

 

謝辞


本研究を進めるにあたり,気象研究所の吉崎正憲氏,加藤輝之氏,永戸久喜氏, 田中恵信氏,楠研一氏,防災科学技術研究所の岩波越氏に協力いただきました. さらに,WMO-01観測グループメンバーの皆様には大変お世話になりました. この場を借りてお礼申し上げます.

また,本研究は科学技術振興事業団・戦略的基礎研究(CREST)より補助を受けました.