冬における台風発生の数値シミュレーション

$^*$池田泰論・伊藤久徳(九州大学・理学部)

 

1 はじめに

台風の発生過程はいまだよくわかっていない。 そこでこの研究では、冬に起こった台風8427号のシミュレートを試み、台風形成の過程をPV(potential vorticity)の視点から調べた。また、ウォームコアの形成過程についても調べた。冬の台風を選択したのは、夏は台風発生に好ましい熱的環境にあるため、 至る場所・時間で発生する可能性があるのに対し、冬は大規模場の影響が強く出 るので、比較的シミュレートしやすいと考えたからである。

2 使用したモデルとデータ

用いたモデルはPSU(Penn state university)/NCARのメソス ケールモデル5(MM5)である。シミュレーションの領域は、(142$^\circ$E, 15$^\circ$N)を中心とした、 81km格子間隔、80×90格子の領域である。さらに、その領域に、2重のネステ ィングをしており、それぞれ、27km, 9km格子間隔、130×160, 181×181格子で ある。

モデルの初期値・境界値としては、NCEP/NCAR再解析データ(2.5$^\circ$格子間 隔)の海面気圧・ジオポ テンシャル高度・風・大気温度・相対湿度、そして、Reynolds 海面温度 (1.0$^\circ$格子間隔) を用いた。

3 シミュレーション結果

観測で熱帯低気圧となった2日前からシミュレーションを開始したにもかかわら ず、比較的、現実的な台風をシミュレートできた。

シミュレーションの初期において、上層には大規模な高気圧性の渦による発散が みられ、台風発生地点の1000km程北には、大規模な収束帯が見られた。これによ り初期のPVが作られたと考えられる。

PVの発達の様子を追っていくと、中層と下層では、最初、別々にPVが発達していき、やがてそれらが合併することで、鉛直につながった強いPVが作られ、その後、急速に台風強度へと発達していくということがわかった。図1、図2は700hPaと950hPaのPVを示しており、それぞれシミュレーション開始から64h、80h後の様子である。 また、中層、下層のPVの発達に寄与するものは、どちらも非断熱加熱によるものであった。

ウォームコアの形成については、それは台風になる直前に起こり、中層、下層のPVの合併に伴って中心付近で積乱雲が強化、持続されるために、持続的な強い加熱が得られ、形成されるということが示唆された。


図1: シェイドは700hPa、コンターは950hPaのPV。64hでの様子。 中層と下層で独立したPV極大が見られる。


図2: シェイドは700hPa、コンターは950hPaのPV。80hでの様子。中 層と下層のPV極大は一致している。


4 今後の課題

今回の研究では、まだ、台風8427号だけしか解析をしていない。今後は他の事例 に関しても同様のシミュレーションを行い、台風の発生過程を調べていくつも りである。