九州地方における夏季積乱雲(熱雷)の出現・移動特性

対流圏科学研究分野  渡邊 啓倫

1.はじめに

対流等による降水が日変化することは古くから知られている.Fujibe(1999),Misumi(1999)等の解析では,夏季の降水の日変化に2つの顕著なピークが見られた.1つは沿岸部で見られる3〜6時の早朝のピークであり,もう1つは内陸部で見られる15〜18時の午後のピークである.後者の午後のピークは強い日射による地表面加熱で発生する対流によって現れる.このような対流は,活発な雷活動を伴う大きな雷雨,「熱雷」に発達することもしばしばある.我が国における熱雷の研究は,関東地方では盛んに行われてきているが,九州では事例解析にとどまっている.そこで,本研究では1994年から1998年までの夏季7,8月の九州地方における熱雷の出現・移動特性の解析を行なった.

2.解析データ

解析に用いたデータは,気象庁発行の以下に示すものである.

・気象庁天気図        ・アメダス10分間値データ      ・アメダス時別値データ

・高層気象観測年報      ・北部九州合成レーダーデータ 

3.解析方法

解析期間は1994年〜1998年までの7,8月の合計310日である.熱雷に焦点を当てるため,この中からまず梅雨前線,台風などの総観規模擾乱の影響による降水があった110日を除外した200日を解析対象日とした.また,レーダーデータにおいて,日中,とりわけ午後になって発生し,降水強度が16mm/hourの領域が縦4マス×横4マス(1マスは2.5km×2.5km)以上に発達した降水エコーを「熱雷」と判断した.200日の解析対象日のうち熱雷発生日は56日あった.

4.結果

図1,図2から山岳(高度200m以上)での熱雷の発生数が平野(高度200m以下)での発生数の10倍以上に当たり,熱雷が山岳部,特に九州山地で13時〜15時にかけて多く発生していた.相対湿度は熱雷日の方が熱雷のない日より対流圏全層にわたって大きく,地上気温についても熱雷日の方が9〜12時で高く,高温多湿であることが熱雷発生をより促進させることが分かった.また,熱雷の移動方向は750hPaの風向と一致することが多いことが分かった.

図1:熱雷の発生数の時系列.

(黒=平野,白=山岳)

図2:熱雷の発生地点の分布.