対流圏と成層圏における 卓越モード間のつながり

対流圏科学研究分野  原田 憲一

・ はじめに

現在、気象庁の天気予報の際に使用されるモデルにおいては、成層圏の変動が考慮に入れられている。このように、成層圏の変化が対流圏に影響を与えるということは近年、特に言われてきたことであり、反対に突然昇温の様に対流圏が成層圏に大きな影響を与えることも知られている。この研究では、経験的直交関数展開(EOF)解析と回帰(regression)を計算することによって対流圏、成層圏両方に見られる卓越モードを通して、両者の関係について考えていく。

・ データ   

使用するデータはNCEP/NCARの再解析データであり、冬季北半球(11月〜4月の北緯20度〜90度)のジオポテンシャル高度の値を用いる、対流圏、成層圏の3層(30,500,1000hPa高度)の高度における月平均のデータと、11層の高度(1000,700,500,300,250,200,150,100,50,30,10hPa高度)における日平均のデータを使用する。

・ 結果

まず、月平均したデータを使ってEOF解析を行う。これによって各層の変動をいくつかの主成分に分解できるので、その第1、第2モードを取り出してくる。すると、3層とも、第1モードは北極と中緯度の値がシーソーのように片方が高いと片方が低い、という北極振動(AO)と呼ばれる形になる。このAOは成層圏から対流圏にかけて鉛直に結合したモードとされているので、それを確かめるため、EOF30−500hPa間、30−1000hPa間のregression解析、結合EOF解析を行い、30hPaの変動と関係する500hPa,1000hPaの変動を取り出す。AOの説が正しいならば、第1モードの解析結果においてAOが見られるはずだが、出てきた結果は第1モードにおいてはNAO(北大西洋振動)パターン、第2モードもEOF解析とは異なりPNA(Pacific/North America)パターンが見て取れた。

そこで、今度はその2つの結合パターンについて成層圏と対流圏のつながり方を日平均のデータを使って調べることにした。以下、30hPaEOF1と対流圏NAOを「第1モード」、30hPaEOF2と対流圏PNAを「第2モード」とする。日平均のデータを用いたのは、卓越モードの伝わる方向(成層圏から対流圏へなのか、その逆なのか)や、伝わるのにかかる時間に関して、月平均のデータでは大雑把過ぎるからである。lag-correlation解析を行った結果、第1モードは成層圏から対流圏へ、第2モードは対流圏から成層圏に約1週間の時間をかけて伝わっていることが分かった(下図)。さらに、30hPaの変動を反映した各層の時系列と、それを利用したcomposite平均のデータによって、第2モードとして対流圏から成層圏に上がっていった変動が、第1モードの変動として帰ってくるという可能性がみられた。