梅雨期における線状降水系``五島ライン% latex2html id marker 153
\setcounter{footnote}{2}\fnsymbol{footnote}''の解析

*中村綾子・守田治(九大・理),北崎康文(福岡管区気象台)




1. はじめに

梅雨期の九州地方では,しばしば線状降水系が観測される。線状降水系は停滞し,集中豪雨をもたらすことが少なくない。出水豪雨をもたらした甑島ライン(Niino and Morita,1997)や,島原半島に豪雨をもたらした諌早ライン(Arao et al.,1996),また長崎半島に豪雨をもたらした長崎ライン(Yoshizaki et al.,2000)などが過去に議論されてきた。2001年6月19日に福岡で起きた豪雨の事例では,五島列島から北東方向にのびる線状降水系が観測された。本研究では,この線状降水系を五島ラインと呼ぶ。この五島ラインは同年7月6日にも観測された。本研究では,2001年6月19日および7月6日に観測された五島ラインの解析を行った。

2. データ

本研究の解析に用いたデータは,AMeDASデータ,高層気象観測データ,天気図,GMS-5の赤外線画像,メソ領域客観解析データ(MANAL),レーダーエコー図である。

3. 2001年6月19日の五島ライン

北部九州地方では,19日の午前中から昼過ぎにかけて,五島ラインが定常的に見られた(図1a)。降水域が五島列島の北東側からさらに北東方向にのびるラインを形成した後,走向を時計回りに変化させて福岡に達し,その後通過した。その間,福岡では約80mmの降水量が観測された。五島ラインの幅は約8〜15km,長さは約130〜200km,寿命は約4時間であった。

19日09JST,九州地方は梅雨前線の南側に位置し,対流圏全層にわたり湿潤で,中立に近い対流不安定な成層状態であった。五島ライン周辺では,地上で南風,下〜中層で南西風が卓越しており,下層では強い鉛直シアおよび南西ジェットが観測された。また,五島ラインの走向は700hPa面の風向に一致していた。さらに,MANALを用いた解析から,五島列島の南側および北東海上に顕著な地上水平収束域の存在が確認された。

4. 2001年7月6日の五島ライン

五島ラインは,2001年7月6日に再び観測された(図1b)。長さ150〜250km,幅7〜15km,寿命は約3時間であった。平戸島の北東側から降水域が発生し,北東方向にラインを形成した。その後,五島列島の北東側からのびた降水域と合併して五島ラインとなり,時間とともに時計回りにゆっくりと走向を変化させた。

6日03JST,寒冷前線が対馬海峡上にあり,九州地方は対流圏全層にわたり湿潤で,中立に近い対流不安定な成層状態であった。五島ライン周辺では,地上で南風,下〜中層で南西風が卓越しており,下層では強い鉛直シアが観測されたが下層ジェットは見られなかった。また,五島ラインの走向は925hPa面の風向に一致していた。そして,MANALを用いた解析から,五島列島の北東側に地上収束域の存在が確認された。

5. まとめ

今回解析した2つの五島ラインが発達した環境場を比較すると,ほぼ飽和した中立に近い対流不安定成層,地上では南風,対流圏下〜中層では南西風といった共通点が見られた。これは1998年6月26日に観測された長崎ライン(Yoshizaki et al.,2000)の環境場とも一致する。

一方,五島ラインの走向は,6月19日の事例では700hPa面の風向に,7月6日の事例では925hPa面の風向に一致するといった相違点も見られた。

(a)2001.6.19  (b)2001.7.6

図: レーダーエコー図。(a)2001年6月19日,(b)2001年7月6日。時刻はすべて日本標準時。
\includegraphics[width=7.0cm,clip]{abstfig1.ps}


謝辞

長崎ラインについて,詳しく御議論いただいた吉崎正憲先生(気象研)に感謝いたします。


% latex2html id marker 153
\setcounter{footnote}{2}\fnsymbol{footnote}五島列島の北東側から北東方向に伸びる線状降水系を新しく五島ラインと定義した。