西太平洋における台風発生に関する
大規模循環場と海水面温度

                                                            対流圏科学研究分野     古沢 進

台風発生に関して、大西洋においてはSST(海水面温度)や大規模場との関連が指 摘されているが、太平洋においてはあまり研究が進んでいない。吉田(2000)では、 西太平洋において台風発生と風データにcut-off周期8日のlow-pass filterをか けた大規模場との間に有意な関係が見られた。しかし、月平均SSTとの間には有 意な関係が見られなかった。本研究では、吉田(2000)を発展させ、風データに cut-off周期15、30、45、60日のlow-pass filterをかけ、どれくらいの時間スケー ルの大規模場が台風発生と関連するのかを調査した。また、SSTについても週平均データを1日毎に内挿し風データと同様にlow-pass filterをかけて調べた。次に、台風発生時の大規模下層パターンの同定を行った。

解析にあたり、台風の事典、NCEP/NCAR再解析データ、NOAA・CDCのReynolds SST を用いた。解析領域は、台風発生と大規模場・SSTの関係の解析では5N-35N、 105E-180E、大規模下層パターンの同定では5N-20N、120E-180Eとした。ただし、 東太平洋で台風の強さにまで発達したものが西進し、経度180度線を越えたため 台風となったものについては、解析の対象からはずした。解析期間は1983年から 1997年で、そのうち年間発生数の約70%が発生し、西太平洋の台風シーズンにあたる7月から10月とした。

台風発生時と全体場における物理量の頻度分布を比較することで、台風発生に好 ましい条件かどうか解析した。台風発生時の頻度分布は、台風が発生した時間・ 位置のデータを用いて求めた。また、全体場の頻度分布は解析対象となる全ての 台風の発生地点における解析期間中の全ての時系列データを用いて求めた。次に、 大規模下層パターンの同定については、台風発生前2日の大規模場を主観的に解 析・分類し、各々のパターンでコンポジットを行った。

その結果、台風発生とSSTとの間には、cut-off周期60日まで28.5°C付近で発生しや すいことがわかった。一方、循環場に関しては、弱い鉛直シアーはcut-off周期 60日まで、上層(200hPa)における発散はcut-off周期45日まで、下層(850hPa)における 低気圧性渦度はcut-off周期60日まで、下層(850hPa)における南よりの風は cut-off周期60日まで有意な関係が見られることがわかった。また、各項目にお いて有意な関係が見られる時間スケールに違いがあることについて考察した。次 に、下層パターンの同定については、monsoon shear line、confluence region、 easterly waveの3つのパターンに分類し、各々コンポジットすることでそれぞれ のパターンの特徴が明瞭に見られた(図1〜図3)。

台風発生前2日の大規模下層パターン(風ベクトルと渦度)

図 1: monsoon shear line
\includegraphics[width=0.95\textwidth]{mslvor2.eps}
図 2: confluence rigion
\includegraphics[width=0.95\textwidth]{crvor2.eps}
図 3: easterly wave
\includegraphics[width=0.95\textwidth]{ewvor2.eps}

矢印は風ベクトルで、その大きさは右下の矢印が10m/sを表す。陰影は正の渦度を表し、薄いところは$4.0×10^{-6}$m/s以上、濃いところは$8.0×10^{-6}$m/s以上である。