台風発生と大規模循環場・海面水温との関係

氏名: 吉田 優
指導教官: 伊藤 久徳


 台風は,我々の生活にとって最も身近な大気現象の一つであり,その発生については 大きな関心がある.台風発生に関して,大西洋領域においてはSSTや風の鉛直シアー などの大規模場との関連が指摘されているが,太平洋領域においてはあまり研究が進 んでいない.本研究では,北太平洋西部において,台風発生時の大規模循環場と海面 水温の様子を見ることによって,台風発生に関して好ましい環境を探ることを試み た.

 解析にあたっては,台風発生時間および位置のデータとして理科年表読本CD-ROM台風 の事典,風のデータとしてNCEP/NCAR再解析データ,海面水温のデータとしてNOAA・ CDCのReconstructed Reynolds SSTを用いた.風データは,台風と大規模場との関係 を見るため8日のlow-pass filterに通して使用した.また,SSTデータは月平均であ る.解析領域は北太平洋西部領域の5N-35N,105E-180Eとした.ただし,北太平洋東 部で台風の強さまで発達したものが西進し,経度180度線を越えた結果台風となった ものについては解析の対象からはずした.解析期間は年間発生数の約70\%が発生し, 北太平洋西部域の台風シーズンにあたる7月から10月とした.

 台風発生時と全体場における物理量の頻度分布を比較する事によって,台風発生に好 ましい条件を探った.台風発生時の頻度分布は,台風が発生した時間・位置のデータ を用いて求めた.また,全体場の頻度分布は,解析対象となる全ての台風の発生地点 における解析期間中の全ての時系列データを用いて求めた.

 台風発生と月平均SSTとの間には月平均SSTが26.5\degC 以下では発生していないこと を除いては,有意な関係は見られなかった.一方,循環場に関しては,鉛直シアー, 200hPa面と850hPa面の発散・渦度および850hPa面の南北風のそれぞれについて解析を 行い,台風発生時には全体場と比較して,1)弱い鉛直シアー,2)上層(200hPa)におい て発散,3)(850hPa)において低気圧性渦度,C下層(850hPa)において南よりの風とな るような分布の偏りが見られた.また,それらの偏りも有意であることが確かめられ た.

解析の結果得られた1)〜4)環境のうち,1)弱い鉛直シアーは,台風の構造の特徴であ るwarm coreの形成に重要である.また,3)下層の低気圧性渦度や4)南風は,下層収 束および偏東風との収束線を形成し,2)上層の発散は,下層に収束した空気を排出す るという点において,エネルギー源である水蒸気の確保およびCISKの形成に都合がよ い条件となっているといえる.