カスピ海周辺のブロッキング形成における高・低周波力学の役割に関する事例研究

氏名: 今林 隆史
指導教官: 伊藤 久徳



 大西洋東部,太平洋中東部に次ぐブロッキング発生の3番目のピークに,カスピ海周辺の北ロシア(50゜〜 60゜N ,60°E付近)がある.本研究ではこの領域のブロッキングについて,1990年〜1997年のNCEP(National Center of Environmental Prediction)再解析データを使用して,その成因について考察するために事例解析を行った.300hPaのジオポテンシャル高度(z300),および330Kの渦位(PV)と風のベクトルのデータを用いた.そして,この8年間の中で最も明瞭なブロッキング現象の一つ(1996年11/15〜12/11)に注目した.この事例では,ジェット気流の蛇行がよく見え,渦位の低い空気が侵入しているブロッキングの中心付近では風速が弱まっていた.

 次に,z300の31日移動平均をとったデータの年平均から,気候学的平均を求めた.この気候学的平均をz300から引いて,300hPaのジオポテンシャル高度の偏差(z300anomaly)を得た.このz300anomalyにカットオフ周期が8日のlow-passfilterをかけて,高周波と低周波を分離した.

 これらのデータからz300anomalyの場に対して,渦度フラックスの収束による300hPaにおけるジオポテンシャル傾向の形で求められた高周波非定常渦と低周波力学による強制が,ブロッキング形成・増幅時にどのように影響を及ぼすかを求めた.

 結果より,今回解析した事例においては,高周波変動による非定常渦の強制はブロッキング形成及びその維持にほとんど寄与してなく,低周波力学がブロッキング形成に主に寄与していることが分かった.



ブロッキング増幅期(11/27-12/2)での1200協定世界時における300hPaジオポテンシャル高度.図の範囲は20-90°N、60°W-180°E.

ブロッキング増幅期(11/27-12/2)での1200協定世界時における300hPaジオポテンシャル高度の偏差.図の範囲は20-90°N、60°W-180°E.

ブロッキング増幅期(11/27-12/2)での1200協定世界時における低周波力学による強制.図の範囲は20-90°N、60°W-180°E.