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数値予報(Numerical Prediction)



数値予報とは

数値予報は,物理学の方程式により,風や気温などの時間変化をスーパーコンピュータで計算して将来の大気の状態を予測する方法です。

数値予報を行う手順としては,まずコンピュータで取り扱いやすいように,規則正しく並んだ格子で大気を細かく覆い,そのひとつひとつの格子点の気圧,気温,風などの値を世界中から送られてくるデータを使って求めます。これをもとに未来の気象状況の推移をスーパーコンピュータで計算します。この計算に用いるプログラムを「数値予報モデル」と呼んでいます。

リチャードソンの夢

最初に数値シミュレーションによる予報実験を試みたのはイギリスのリチャードソンです。コンピュータの実用化以前の1920年頃,およそ水平200km間隔で鉛直5層の格子を用い,6時間予報を1か月以上かけて手計算で行いました。残念ながら,用いた数値計算に難点があり,非現実的な気圧変化を予測してしまい,野心的な試みは失敗に終わりました。しかし,リチャードソンはその著書の中で,「6万4千人が大きなホールに集まり一人の指揮者の元で整然と計算を行えば,実際の時間の進行と同程度の速さで予測計算を実行できる」と提案しました。数値予報の将来を信じたこの言葉は,「リチャードソンの夢」として有名です。

カオスと予測可能性

数値予報では,わずかに異なる2つの初期値から予報した2つの予報結果は,初めのうち互いによく似ていますが,その差は時間の経過とともに拡大します。数値予報の初期値には観測誤差は避けることはできず,これが時間とともに増幅するためです。これは,数値予報モデルや解析の精度の問題だけではなく,大気の基本的な性質によるものです。このように初期値の小さな差が将来大きく増大する性質はカオス(混沌)と呼ばれています。

完全な初期値を観測から得ることは不可能であるため,一つの初期値から始めた数値予報による決定論的な予報には限界があるために,「アンサンブル予報」という数値予報の手法が研究・開発されるようになってきました。これは、ある時刻に少しずつ異なる初期値を多数用意して多数の予報を行い,その統計的な性質を利用して最も起こりやすい気象現象を予報するものです。


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図:気象庁の1か月予報モデルが予報する,26アンサンブルメンバーの平均500 hPaジオポテンシャル高度。予報開始3日目のアンサンブル平均で,2003年11月1日の分布を予報しています。このアンサンブル予報は,太平洋東部での偏西風の波打ちを予報していることがわかります。