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ブロッキングの傾圧波の相互作用



ブロッキングは,中緯度の大規模大気変動を支配する重要な低周波振動の一つです(気象の教室/ブロッキング).ブロッキングは異常気象や,予報精度の善し悪しとの密接な関係から,そのメカニズムの解明は気象学における重要な課題の1つとなっています.そしてこれまで,多くの秀逸な先行研究によって,ブロッキングの力学がより詳細に,より具体的に理解されてきました.しかしながら,依然としてそのメカニズムが完全に理解されたとは言えません.上記のような社会的ニーズとの関わりからも,ブロッキングの力学的メカニズムについての更なる研究がますます必要となれています.

ブロッキングの力学については,形成と持続の両方を理解することが重要です.しかし,やはりブロッキングの最も特筆すべき特徴は,中緯度偏西風帯におけるその持続性の大きさです.通常中緯度帯の現象は,強いジェット気流によって2,3日程度でパターンが変化しますが,その中でブロッキングは,非常に強い振幅を維持したまま,1週間以上の長きにわたって停滞,持続します.図1は時間平均した対流圏上層のジオポテンシャル高度場を示していますが,ブロッキングはその持続性から時間平均した図でも顕著な高気圧偏差を示しています.

ではブロッキングはシステムの遷移が早い偏西風帯において,なぜこのような持続性を持つのでしょうか.その点に関して,ブロッキングによって進行を妨げられる移動性高低気圧(傾圧波)が,ブロッキングを強化しているということがわかってきました,1970年代から盛んに研究されはじめたブロッキングと傾圧波の相互作用は,多くの研究者によってその様相が明らかになっています.

私たちの研究室では,その相互作用のメカニズムについて,渦と渦の相互作用という視点から解明を行っています.この渦と渦の相互作用は,2つの接近した台風の運動についてよく知られた藤原効果と本質的に同じメカニズムです.この相互作用メカニズムに基づくと,ブロッキング高気圧が移動性高気圧を選択的に引き寄せ吸収することで,ブロッキングが強化され,その強化されたブロッキングが移動性高気圧を強く引きつけ吸収し,また自身の持続性を強化します.このようにしてブロッキングは傾圧波と相互作用し,長く持続することができます.

このメカニズムが本質であることを確かめるため,現在精力的に研究を行っています.現在進行形の研究ですが,これまでの研究によって得られた2つの結果を以下に示します.まず1つめ(図2)は,実際の持続しているブロッキング事例において,ブロッキングと相互作用する移動性高・低気圧の動きを追跡した流跡線の様子を示しています.赤は移動性高気圧の流跡線で,黒は移動性低気圧の流跡線です.図の中央にあるブロッキング高気圧に向かって,赤い流跡線が選択的に吸収されている様子が見られます.次の図(図3)は簡易数値モデルでのブロッキングと移動性高低気圧の相互作用の様子を示したスナップショットです.ここでのブロッキングはdipole型のものですが,やはり渦と渦の相互作用より,ブロッキング高気圧が移動性高気圧を,ブロッキング低気圧が移動性低気圧を吸収している様子が見られます.またこの数値実験では,移動性高低気圧によってブロッキングの持続性が強化されることも確かめられました.


blocking1

図1:太平洋上空200hPa面(およそ対流圏界面)でのジオポテンシャル高度の8日間平均図.ブロッキングの持続性から,時間平均した図でもブロッキング高気圧がアリューシャンの上空に見られる.


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図2:ブロッキング持続期間中での移動性高・低気圧起源の粒子の追跡(流跡線)図.赤い流跡線は移動性高気圧の粒子のもの,黒い流跡線は移動性低気圧の粒子のものを表す.コンターは,短周期のノイズを除去した偏西風の様子を示しており,アリューシャン上空の閉じたコンターがブロッキング高気圧を示している.


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図3:dipole型ブロッキングと移動性高低気圧の相互作用を確かめるための簡易数値実験の結果.図は相互作用が起こっているときの流線関数の分布を示しており,暖色が高気圧,寒色が低気圧性循環を示している.図から,中央のブロッキング高(低)気圧と移動性高(低)気圧が相互作用し,ブロッキングに移動性高低気圧が吸収されている様子が見られる.


文章・図:山崎哲