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アリューシャン低気圧・アイスランド低気圧と移動性低気圧の関係



アリューシャン低気圧・アイスランド低気圧は、冬季北半球にそれぞれアリューシャン列島とアイルランド付近に出現し、日平均データよりも1ヶ月や季節平均データで明瞭となる定常性の低気圧です(図1)。以後、アリューシャン低気圧をAL、アイスランド低気圧をILとします。これらの変動は冬季北半球の循環場の主な特徴として挙げられ、極東・北米・欧州の冬季の気候に大きな影響を与えます。過去の研究では、ALが弱い時、日本が暖冬になる傾向があることを報告しています。このように冬季北半球の気候変動に重要な両低気圧は、古くからテレコネクションパターン(PNA、NAO)との関係、そして近年では両低気圧の相互関係(アリューシャン・アイスランド低気圧シーソー)にについて研究が進められ、現在活発に議論が行われているテーマの1つになっています。


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図1:北半球冬季[12~2月(1958~2009)]の1000 hPa面高度場の気候値。 (30 m間隔)


AL・ILの変動は、移動性低気圧や海面水温など複数の要因によって引き起こされると言われています。私達の研究室では、AL・ILの変動と移動性低気圧との関係に着目し、AL・ILを強い年と弱い年に分類(*)することで、その役割・重要性に迫りました。

まず、移動性低気圧が頻繁に通過する効果について考えました。図2と図3は、それぞれALの強い年と弱い年での1000 hPa面高度偏差と移動性低気圧経路の合成平均図を示しています。これらより、強い年では高度偏差が負で高度偏差の中心に移動性低気圧が多数侵入している一方で、弱い年では高度偏差が正で移動性低気圧は高度偏差を避けるように西へシフトしていることが分かります。よって、移動性低気圧が通過することで高度場が変動し、ALの変動に寄与していることが分かります。


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図2:ALの強い年と弱い年での1000 hPa面高度偏差 (10 m間隔)

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図3:ALの強い年と弱い年の代表年における移動性低気圧経路と発生(□) 、成熟(☆) 、消滅(○)位置の分布


次に、移動性低気圧が熱・運動量を輸送する効果について考えました。図4は、非定常擾乱 (移動性高低気圧) が月平均高度場偏差に与える影響を示しています(図4)。図2との比較より、非定常擾乱がALの変動を維持・強化していることが分かります。


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図4:AL(上)、IL(下)の強い年と弱い年での非定常擾乱(~8日)による高度傾向 (m)。


以上より、ALの変動において移動性低気圧の重要性が明らかとなりました。ただし、移動性低気圧のみでALやILの変動の全てを説明することはできず、さらに様々な側面から調べていく必要があります。


*AL・ILの強い年・弱い年は、冬季のAL・IL領域の平均値から気候値を引いた、高度偏差で定義します。

文:圓井拓哉