研究室について



私たちの研究室は対流圏の様々な現象に興味を持って研究を行っています。

 

対流圏は,大気圏最下層にあり,私たちの生活に最も近いところに存在しています。
その中で起こっている様々な気象現象は私たちが思い浮かべるもの--降水、雷、竜巻,台風,梅雨等--から私たちが直接には感じにくいもの--ブロッキング,大気振動等--まで多岐にわたっています。

気象学の発展とともに,多くの現象が理解され,同時に天気予報の精度も向上して来ましたが,まだこの学問は発展途上の段階にあります。 その理由は種々ありますが,その大きな原因の一つは対流圏での現象の多様性に起因していると考えられます。降水を伴う現象,地球を周回する大きな現象など,様々な特徴,様々な空間・時間スケールを持つ現象が相互作用し(非線形的な性質),複雑に絡み合うことで,それらの現象の理解や私たちの生活に関わる予報を難しくしているのです。

このように,対流圏は私たちの生活に最も身近な大気層でありながら,同時に最も理解の困難な研究領域となっています。そこで,私たちの研究室では,そのような様々な現象や,それらの複雑な相互作用を,データ解析や数値シミュレーションといった手法を有機的に結合させることにより,様々な視点から研究を行っています。

以下,私たちの研究室が進めている研究対象を,このスケールや力学的特性の観点から4つのサブグループに分け,それぞれについて解説を加えています。説明の便宜上このような分類を行っていますが,実際はそれぞれのサブグループをまたぐような包括的な研究も行っています。




 メソスケール気象


気象現象をその水平スケールにより3つに分類したとき(ミクロ,メソ,マクロスケール;気象の教室参照),その中間にあたる2〜2000 kmスケールの現象を,ラテン語の「中間の」の意味をもつ「meso」を用いてメソスケール(meso-scale)現象と言います。メソスケール現象には海陸風や局地風なども含まれますが,現在のメソスケール気象学の核心は,積乱雲に関連し雷雨・降雹・集中豪雨・豪雪・台風などの激しい気象現象を対象としたものです。

孤立した積乱雲の水平スケールは約10 km,寿命は約1時間程度ですが複数の積乱雲が数百 kmスケールの対流システム(メソスケール対流系)に組織化すると,そのシステムは数時間程度の寿命をもち,数時間にわたり激しい降水をもたらします。このようなメソスケール対流系の振る舞いは,より大きなスケールの場(環境場)によって決定されますが,逆にメソスケール対流系がその環境場に影響を及ぼすという相互作用があります。よって,メソスケール対流系に関する研究はメソスケール気象学における最も重要なテーマの1つであり,我々の研究室でもメソスケール対流系に関するさまざまな研究に取り組んでいます。

また,竜巻やマイクロバーストなどはメソスケールよりも小さなスケールの現象ですが,積乱雲と密接に関連しているので,メソスケール気象学の分野で研究されています。

Topics

レインバンドの数値シミュレーション

梅雨前線上の低気圧

メソ対流系の雲システムの分類

梅雨期の降水の日変化

竜巻発生とその環境場

豪雨事例の再現実験




 中・高緯度の大気



中・高緯度の大気については,これまで多くの研究がなされてきました。中でも代表的なものに,私たちに移動性高低気圧として馴染み深い傾圧不安定波があります。これは,Charney (1947)や,Eady (1949)などの先駆的な研究により,十分に力学的プロセスが記述されました.これらの研究は近代気象学の祖とされています。

このような傾圧不安定波(周期約8日程度)以外にも,中・高緯度では10日以上の周期を持つ長周期変動とよばれる変動が卓越しています。具体的には,特徴的なパターンが長く持続し,かつ繰り返し起こる現象--天候レジーム--や東西流が大規模にブロックされ,南北流が卓越するブロッキング,遠く離れた場所が互いに関係しあいながら変動するテレコネクション・パターンなどがあり,その時間スケールから,いわゆる異常気象と密接に関係しています。

しかしながら,それらの形成や持続のメカニズムはいまだによくわかっていない点が多くあります。中・高緯度では,Coriolisパラメータの影響によって,大気の運動が2次元的な性質を強く持つようになっています。この性質によって,大気は傾圧波動のような短周期成分と,卓越する低周波変動とが複雑に相互作用するようになり,大気の様々なスケールの現象が複雑に絡みあって多種多様な様相を見せています。

こういった中・高緯度での大気変動の理解には,現象の興味深さの他にも,異常気象との関係,また,天気予報の精度との関係など,実践的な要請を多分に含んでいます。こういったモチベーションに加えて,近年注目されている気候変動との関係からも,今このような気象の研究が求められています。

 

Topics

ブロッキングと傾圧波の相互作用

天気予報と予測可能性

アリューシャン低気圧・アイスランド低気圧と移動性低気圧の関係

傾圧波と低周波変動の相互作用

梅雨期における大雨発生のメカニズム

大規模場において卓越する独立変動

 




 熱帯大気


赤道を含む熱帯域は,地球上で最も太陽からのエネルギーを受け取る領域です。特に海洋はそのエネルギーによって温暖になり,その結果海洋との相互作用による積雲活動が活発となります。そのため熱帯大気は,ENSOに代表されるような大気と海洋が強く結合した大気海洋系が形成しています。私たちの良く知っている台風も,このような大気海洋結合の結果生じるシステムであることは,広く知られています。

また熱帯にも大気波動が存在しています。熱帯では,Coriolisパラメータが小さいことで,中・高緯度とは異なる大気波動が存在しています.Rossby波と重力波が区別されない、それらの混合した波であるKelvin波や混合Rossby重力波という熱帯特有の波動が存在しています。さらにこれらの大気波動と,活発な積雲活動とが相互作用することによって,中・高緯度のそれとは異なる大気現象が存在しています.

このような熱帯大気の変動は,中緯度帯に存在する日本や,地球全体に大きな影響を及ぼします.例えば,熱帯で形成された台風が,日本に上陸する場合などは,まさにこの影響に当てはまります。台風などに限らず,ENSOなど大きなスケールの現象など,熱帯大気の変動が及ぼす影響はとても大きいと考えられています。

複雑な大気と海洋の相互作用プロセスを持つ熱帯大気現象で,特に日本の天候に大きな影響を及ぼすと考えられているものに,Madden-Julian振動(MJO)があります。これは30〜60日かけて、雲集団の複合体(クラウドクラスター)がインド洋から太平洋へとゆっくり移動する現象で,その変動は熱帯の運動を大きく規定しています。MJOのメカニズムはよくわかっていないため,研究室では特にそのメカニズムや,台風との相互作用,また全球への影響について研究を行っています。

さらに我々の研究室では,台風の力学そのものについても関心を持っています。台風は昔から多くの研究者によって研究されてきましたが,その発生のメカニズムや,中緯度での経路の取り方,他の大気現象との相互作用など,たくさんの未解明なテーマがあります。そのような台風のメカニズムについても,主に力学的な立場から研究を行っています. 

Topics

台風の発生機構

MJOと台風発生の関係

台風と梅雨前線の相互作用




 気候変動とその影響


 

大気の変動の中には,数ヶ月から数年という長い時間スケールで変動する現象が存在しています.例えば,テレコネクション,ENSOなどといったものがその代表例です.また,さらに大きな時間スケール(数年,数十年~数百年)で考えると,地球温暖化も長期変動の一つと考えることができます。今ここでは,数年〜数十年のスケールで起こる大気状態の変化を気候変動と呼びます.

こういった時間スケールの現象は,以下のある年,ある年代といった時間スケールの大気状態に非常に大きな影響を及ぼすので,農業や経済などの人間の生活と密接に関係していると考えられています.また,大気内部での様々な時空間スケール同士の相互作用によって,より時間スケールの小さな異常気象の出現頻度の変化なども考えられます.このようなことも気候変動の一つであると考えれば,大気システムが非常に複雑な系であるということが理解できます.

しかしながら,気候変動と実際の異常気象との間の関係や,気候変動自体のメカニズムについてわかっていない点が多くあります.この様々な長期変動現象のメカニズムについて,主に力学的な立場から,特に気候変動によって引き起こされる大気循環の変動や,その他のシステムの変化について,研究を行っています。


Topics

温暖化と気温の年々変動

サクラの開花と温暖化




 過去なされた研究


ピナツボ火山と気候変動